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ゆがけ
遠藤 弘之 (えんどう ひろゆき)
 

 




遠藤 弘之(HIROYUKI ENDO)
1976年福島生れ

高校を卒業と同時に東京のゆがけ職人のもとに弟子入り。気温や湿度も革に影響するので、天候の悪い日は絶対に革に触れないというこだわりの持ち主。

【作品より】

顔料で染色したもの
革の表面に特殊な加工を施して色の食い付を良くし、顔料にも適度な調合を加え光沢があるのですが革の伸び縮みを殺さないよう仕上げてあります。




職人の遊び心溢れる一品
「自分の為に仕事をしないと飽きてしまう」と遠藤さん。
日々ゆがけの可能性を展ばしている様子が伺える。




革を裁断する際に使う“革断”手入れの行き届いた道具から職人の仕事への姿勢が伺える。

「鹿の革で出来た、弓道をする際に手にはめるグローブのようなものですよ。
ゆがけの説明をする時にはいつもこう言ってるんです。」物腰が丁寧な遠藤氏はそう笑顔で説明された。
簡潔な説明とともに、匠の技が詰まった、その“ゆがけ”が私の目に飛び込んできた。その笑顔からは図ることのできない厳しい仕事がそこにはあった。

職人館 ゆがけ師
藁(わら)で燻してその煙で、染色したもの。 燻す煙にも良し悪しがあるから、煙の見極めが肝心。


人類が最初に身に付けたものは、恐らく動物の革であったと思われる。本能的に人間は革でできたものに興味が湧くようになっているのかもしれない。
しかしその美しさに私は目を奪われてしまった。

鹿の革にも種類があるが、一番革の柔らかい高価な小鹿の革のみを使用している職人のこだわり。
「天然の革には傷があるのが多く、仮に100枚用意したとしても、扱えるのは10枚程度ですね」と語る遠藤さん。
更にお客様の手の形はもちろんのこと、扱う弓の重さ、実際に弦を引く時の負荷を考えてそこからまた革を選出していく。
「自分が納得する革を選ぶまで時間は惜しみません、革を選ぶのが一番大変な仕事かもしれませんね」と笑顔の中にも素材から妥協をしない不動たる信念が垣間見えた。
動物の革を使ってなにかを作る、人類が最初に手がけた創造物といってよい。

ここで簡単にゆがけの製造工程をご紹介する。
1.手の採寸
2.素材である革の選定
3.大まかに革を裁断
4.革の染色(染色後、革を落ち着かせるために蔵の中で1〜2ヶ月落ち着かせる)
5.手の寸法に合わせて裁断
6.縫い合わせて注文者のフォーム(弓を射る際の体の動き)に合わせて大まかに革の癖を取る
7.付属品を組み合わせる
8.弦枕(弦を引っ掛ける硬い部分)を付ける
9.最終的なバランスの確認
10.仕上げ

※7・8はフォームを考慮しながらの取り付け
※6以降は各工程毎に徐々に革の癖を取りながらの製作

 革を選定するだけでも気の遠くなるような作業。そんな仕事をどうして選ばれたのか。
「お客様からのお褒めのお手紙をいただくととても嬉しくなります。段試験に受かった、大会でいい成績がとれたなど、遠方からも手紙を頂いくことがあり、手紙に感謝の言葉が盛り込まれていた時が一番のやりがいを感じることができます」と遠藤さん。

「最初は音楽活動したくて東京に上京するための単なる口実だったんですけどね。ライブツアーで全国を回ってた時期もあったんですよ。
ゆがけを制作していくうちに次はこうしてみたい、次はもっといいものが作りたい。それだけです。お客様からの要望に応えられた時、自分はまだまだやれると自信になりありがたいですね。感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。」

「いいモノはいい。きっちりメンテナンスをしてあげながら、長い期間きっちり使ってあげると自分のものになる。今の人は愛着があるものを身近に置いているだろうか? 壊れたら捨てて、ハイ次といったことになっている今の社会が少し淋しいですね」
本物を知っている職人だからこそ発せされる言葉が現代をうつしている。
現代人にとってこういった本物に直に触れ、感じるということが希薄になっているのではないだろうか。
道具は長い時間をかけ、扱っている人に合ってくるものである。普段から一手間二手間かけて物を大事にする習慣をつけたいものだ。

“かけがえのない”
この言葉の語源は“ゆがけ”の“かけ”から来ているという説もある。
ある対象にとって代わりがないほど大切という意味として現代で使われているが、それほど弓道にとって“ゆがけ”は重要な道具である。

日本固有の文化である弓道。その技を受け継ぐ人は少ない。“かけがえのない”という言葉だけが残り、語源であるゆがけがなくなってしまう日がやってきてしまうのではないかと少し心配になった。

 
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